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多雪地域では耐力壁が増える ――雪荷重が木造の地震設計に効く理由

「同じ規模の建物なのに、雪国で設計すると耐力壁がぐっと増える」。多雪地域で木造建築を手がけると、多くの設計者が一度は突き当たる現象です。じつはこれ、雪そのものの重さもさることながら、どの計算方法を選ぶかによって扱いが大きく変わります。今回は「雪と地震」という、意外に見落とされがちな関係を整理してみます。

「多雪地域の等級1」は「一般地域の等級3」以上

やや刺激的な言い方ですが、平屋で条件をそろえて比べると、多雪地域における耐震等級1の建物は、一般地域の耐震等級3以上の耐力壁量を備えていることがあります(平屋・雪を除いて比較した場合)。同じ「等級1」でも、地域によって要求される耐力壁の量はまったく違う、ということです。

なぜこれほど差が出るのか。カギは「地震力を計算するときに、屋根に積もった雪の重さをどこまで見込むか」にあります。そしてこの見込み方は、採用する計算方法によって次のように分かれます。

計算方法で「雪の扱い」がまるで違う

木造の構造安全性を確かめる方法は、大きく分けて「壁量計算(仕様規定)」と「許容応力度計算」があります。地震力を求めるうえで雪をどう扱うか、平屋・積雪1.5mを例に並べてみます。

計算方法 地震用重量への雪の算入 壁量の目安
① 壁量計算
(仕様規定・延べ床300㎡以下)
考慮しない
一般地域と差が出ない。
基準
② 許容応力度計算
(耐震等級1相当)
考慮する
積雪荷重の一部(0.35S)を地震用重量に加算する。
①より増える(平屋だと約2倍)
③ 許容応力度計算
(耐震等級3)
考慮する
雪の影響をより厳しく見込む。
②の1.5倍

※ S は積雪荷重。0.35S は「多雪区域で地震力を計算するとき、積雪荷重の35%を建物重量に加える」という規定に基づく扱いです。

壁量計算は、雪を考慮しない

①の壁量計算は、地震力の算定に雪を見込みません。結果として一般地域と多雪地域で必要な壁量に差が出ません。この考え方を見直す動きは法改正でも議論されましたが、2025年の法改正では、この点の見直しは延期されています。手軽な一方で、雪の重さが地震時の安全性に効いてくる可能性は、計算の外側に置かれたままなのです。

令和7年施行の壁量等基準に対応した表計算ツール
令和7年施行の壁量等基準に対応した表計算ツール(在来軸組工法用)。積雪量の入力欄はない。屋根・外壁の仕様から必要壁量を求めるが、雪は地震用重量に算入されない。

許容応力度計算は、雪を考慮する

一方②③の許容応力度計算は、積雪荷重の一部を地震用の建物重量に加えて計算します。しかも地震力は、各階の階高の半分から上にある重量を対象に算定するのが基本です。屋根の上に載る雪は、まさにこの「上半分」に効いてくるため、地震時の水平力を押し上げる要因になります。

雪は「もう一棟分」の重さになりうる

どのくらい効くのか、実例で見てみましょう。ある平屋(片流れ屋根・太陽光あり)の重量を単位面積あたりで分解すると、次のようになります。

建物本体と雪の重量比較
建物本体(屋根・太陽光・外壁・内壁)は約1.58kN/㎡。これに対し、積雪1.5mを地震用に換算した重量(0.35S)も約1.58kN/㎡と、ほぼ同じ大きさになる。

建物本体(雪抜き)…約1.58kN/㎡
雪(0.35S・積雪1.5m)…約1.58kN/㎡

つまり、地震力の計算に載ってくる雪の重さが、建物本体とほぼ同じ。雪を除いた重量に対して、地震用重量はおおむね1.5倍程度にふくらみます。地震力は建物の重さに比例しますから、その分だけ必要な耐力壁も増える、というわけです。なお、太陽光が無ければ、建物荷重はさらに小さくなります。

この検討例の外観がこちらです。多雪地域では雪が「もう一棟分」に近い重さで地震設計にのしかかってきます。

検討例の立面図
検討に用いた平屋の立面図。

木造は「軽い」からこそ、雪の影響が大きい

ここでもう一つ押さえておきたいのが、構造種別による自重の違いです。同じ平屋でおおまかに比べると、建物本体の重さは木造を1とすると、鉄骨造で約2、RC造で約6という関係になります。

構造種別による重量(地震力)の比較イメージ
構造種別による重量(地震力)の比較イメージ。木造がもっとも軽く、RC造がもっとも重い(おおまかな比率イメージ)。

ところが、屋根に積もる雪の重さは構造種別によって変わりません。同じ地域なら、木造だろうと鉄骨造だろうと、載る雪はほぼ同じです。すると――もともと軽い木造ほど、雪が加わったときの「重量の増え方」が相対的に大きくなります。ベースが軽いぶん、同じ雪でも効きが大きい、というわけです。

「木は軽くて地震に有利」というのは確かにその通りなのですが、多雪地域ではその軽さが、雪の影響をかえって際立たせる方向に働きます。ここが、雪国の木造設計で条件が厳しくなる本質的な理由です。

まとめ

・多雪地域では、同じ規模・同じ耐震等級でも耐力壁が増える。

・その差は「雪を地震用重量に見込むかどうか」で生まれる。壁量計算は見込まず、許容応力度計算は見込む。

・雪(0.35S・積雪1.5m)は、平屋の建物本体とほぼ同じ重さになりうる。地震用重量はおおむね2倍に。

・軽い木造ほど、一定量の雪による重量の増え方が相対的に大きい。

多雪地域で木造を設計するときは、どの計算方法を選ぶかによって、雪と地震の効き方が大きく変わります。壁量計算で成立していても、許容応力度計算で見れば余裕が少ない――ということも起こります。雪国での設計では、早い段階で「雪込みの地震力」を意識した耐力壁の配置計画が必要です。

WOODCOREでは、多雪地域を含む木造建築の構造設計・構造相談を承っています。「この計画で壁量は足りるのか」といった初期段階のご相談もお気軽にどうぞ。

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