中大規模木造の防耐火法規を解説!耐火建築物・準耐火建築物の要点
脱炭素社会の実現に向け、公共建築物や商業施設において「中大規模木造」への注目が急速に高まっています。
しかし、設計者や施工者の皆様にとって、鉄骨造やRC造から木造へ切り替える際に最も大きな壁となるのが、建築基準法における「防耐火」の規制ではないでしょうか。
「この規模なら木造の耐火建築物にすべきか、木造の準耐火建築物にすべきか?」
「木造で見せるデザイン(現し)にしたいが、法規的に可能か?」
こうした疑問は、近年の法改正により選択肢が増えた分、より複雑化しています。
特に中大規模のプロジェクトでは、コストや工期を左右する重要な判断基準となります。
本記事では、中大規模木造に取り組む建築実務者の方々に向けて、防耐火に関する建築法規のポイントを整理して解説します。
耐火・準耐火の要件の違いから、燃え代設計などの技術的手法、さらにはウッドリンクが提供する構造ソリューションまで、実務に役立つ情報を網羅しました。
木造化のハードルを下げ、魅力的な木造建築を実現するための手引きとしてご活用ください。
<特記事項>
法律や条例等は常に改正されていきますし、その解釈や運用については該当の行政窓口や指定検査確認機関等により異なりますので、本記事の内容は「記事掲載時の一般的な考え方」であることのご理解、ご了承をお願いします。
建築実務者の皆様においては、常に最新の法規等の情報をチェックしつつ、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進めていただくようお願い申し上げます。
このコラムでわかること
- 中大規模木造と防耐火規制の現在地:法改正と市場動向
- なぜ今、中大規模木造が求められているのか
- 建築基準法改正による防耐火規制の合理化
- 木造化における防耐火が最大のハードルになる理由
- 中大規模木造で実現する耐火建築物の法規と要件
- 木造耐火建築物が求められる規模と用途
- 木造耐火建築物で重要な法21条・27条と2019年改正法
- 木造耐火建築物の告示仕様と大臣認定工法の使い分け
- 中大規模木造で建てる準耐火建築物の緩和規定とメリット
- 建築基準法における準耐火建築物の定義と分類
- 準耐火建築物の適用範囲の拡大
- 木を見せる設計が可能に!燃え代設計(45分・60分)の活用法
- 防耐火設計の具体的な手法(メンブレン・燃え代)
- メンブレン型(被覆型)による耐火設計の基本
- 燃え代設計(大断面集成材)を用いた木質感の演出
- 複雑な防耐火設計を支援するウッドリンクのソリューション
- 構想段階からの構造・防耐火計画サポート
- 特殊な金物とプレカット加工による施工合理化
- 中大規模木造の実績に裏打ちされた技術提案力
- まとめ
- ウッドリンクは中大規模木造の頼れるパートナー
中大規模木造と防耐火規制の現在地:法改正と市場動向
近年、脱炭素やESG投資の観点から、企業の社屋や商業施設を木造化する動きが加速しています。
かつては大規模な木造建築は法規上の制限が厳しく、建設が困難なケースも多くありましたが、2000年の建築基準法改正以降、性能規定化が進み、さらにその後に行われた法改正によって防耐火規制が大きく合理化されました。
これにより、従来はRC造やS造でしか建てられなかった規模や用途の建物でも、木造での建設が可能になっています。
まずは、現在の中大規模木造を取り巻く法的な背景と、実務者が押さえておくべきトレンドについて解説します。
なぜ今、中大規模木造が求められているのか
カーボンニュートラル実現に向け、建設時のCO2排出量が少なく、炭素固定効果のある「木材」の利用は社会的責務となっています。
特に、延床面積の大きい中大規模建築物を木造化することの環境貢献度は計り知れません。
また、木材特有の温かみやリラックス効果は、オフィスや教育施設、高齢者施設などの付加価値を高める要素としても評価されています。
ウッドリンクにおいても、非住宅分野からのプレカットや構造設計の相談が増加しており、木造は「環境に優しい」だけでなく「経済的・意匠的に選ばれる」構造体へと進化しています。
建築基準法改正による防耐火規制の合理化
近年の建築基準法改正は、中大規模木造の可能性を大きく広げました。
大きなポイントは「耐火建築物とすべき要件の合理化」です。
従来、高さ13mまたは軒高9mを超える木造建築物は原則として耐火建築物とする必要がありましたが、適切な防火措置を講じることで準耐火建築物等での建設が可能となりました。
また、3000㎡を超える大規模建築物における耐火性能の要件も段階的に緩和(一部廃止)され、木造建築の設計が容易になっています。
これらの改正により、コストのかかる「耐火建築物」一択ではなく、柔軟な計画が可能になりました。
木造化における防耐火が最大のハードルになる理由
法改正が進んだとはいえ、木造は「燃える素材」である以上、S造やRC造に比べて防耐火の設計プロセスは複雑です。
地域の防火指定(防火地域・準防火地域等)に加え、建物の規模、用途、階数によって求められる性能が細かく分岐します。
「耐火構造」にするのか、「準耐火構造」にするのか、あるいは「燃え代設計」を採用するのか。
この初期段階の方針決定を誤ると、後の設計変更やコスト増大に直結します。
実務者には、意匠デザインと法規の整合性を取るための高度な知識と、メーカーとの連携が求められています。
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中大規模木造で実現する耐火建築物の法規と要件
都市部の防火地域内や、一定規模以上の特殊建築物(ホテル、病院、百貨店など)を木造で計画する場合、最も厳しい基準である「木造耐火建築物」としての設計が求められます。
耐火建築物とは、火災が終了するまで倒壊せず、延焼を防止する性能を持つ建物のことです。
木造でこれを実現するには、構造躯体が火災に耐えうることを証明しなければなりません。
ここでは、木造を耐火建築物とするための具体的な要件や、設計実務において注意すべき点について詳しく見ていきます。
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木造耐火建築物が求められる規模と用途
実務においては、法第2条第九号の二(耐火建築物の定義)に基づき、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)を政令で定める耐火構造とする必要があります。
基本的に、防火地域内に建設される地上3階建て以上、または延床面積100㎡を超える建物は耐火建築物とする必要があります。
また、特殊建築物(劇場、病院、ホテル、共同住宅など)で、一定の規模(3階建て以上かつ一定面積超など)を超える場合も同様です。
中大規模木造プロジェクトでは、この「耐火建築物」の要件に該当するケースが多くなります。
木造耐火建築物で重要な法21条・27条と2019年改正法
木造設計において特に重要なのが、大規模建築物等の主要構造部を制限する「法21条」と、特殊建築物の耐火義務を定める「法27条」です。
これらは長らく木造化の壁となっていましたが、2019年(令和元年)の改正建築基準法により合理化が進みました。
特筆すべきは、法21条(大規模木造)の規制緩和です。
従来、高さ13mまたは軒高9mを超える木造建築物は耐火構造等が必須でしたが、改正により防耐火基準が緩和され、一定の延焼防止措置を行えば、主要構造部を木造のままで(耐火被覆なしで)計画できる可能性が広がりました。
これにより、中大規模木造においても、より柔軟な設計が可能となっています。
木造で耐火建築物を設計する際、施行令第107条で定義される「耐火性能」を理解しておく必要があります。
具体的には、火災の継続時間(最上階から数えた階数に応じて1時間〜3時間)に対し、以下の3つの性能を満たすことが求められます。
1.非損傷性:火災による加熱に対して、構造耐力上支障のある変形や破壊などの損傷を生じないこと。(柱・梁・壁などが倒壊しない)
2.遮熱性:加熱面以外の面の温度が、可燃物に引火する温度以上に上昇しないこと。(壁・床を通した熱伝導を防ぐ)
3.遮炎性:屋内に面する部分にあっては、火炎を出す亀裂などの損傷を生じないこと。(炎が貫通しない)
これらを実証するために、後述する告示仕様や大臣認定工法が用いられます。
木造耐火建築物の告示仕様と大臣認定工法の使い分け
木造耐火構造を実現する方法は、大きく「告示仕様」と「大臣認定工法」の2つに分かれます。
告示仕様は、強化石膏ボードの重ね張りなど、国が定めた標準的な仕様を用いる方法で、汎用性が高く、コストコントロールしやすいのが特徴です。
一方、大臣認定工法は、個別に認定を受けた特殊な仕様です。
ウッドリンクでは、プロジェクトの予算と意匠のバランスを考慮し、最適な工法の選定をサポートします。
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(一般社団法人)日本木造住宅産業協会【 木住協大臣認定と国交省告示との違い 】
中大規模木造で建てる準耐火建築物の緩和規定とメリット
すべての中大規模木造を「耐火建築物」にする必要はありません。
法規を精査すれば、よりコストパフォーマンスに優れる「木造 準耐火建築物」として計画できるケースが多々あります。
準耐火建築物は、耐火建築物に比べて要求される性能が緩和されており、設計の自由度が高まるメリットがあります。
特に近年の法改正以降、準耐火構造で対応できる範囲が広がりました。
ここでは、実務で頻出する準耐火建築物の区分と、それを採用することによる具体的なメリットについて解説します。
建築基準法における準耐火建築物の定義と分類
準耐火建築物とは、耐火建築物以外の建築物で、主要構造部を「準耐火構造(法2条9号の3 イ)」とするか、またはそれと同等の準耐火性能を有する「準耐火建築物(ロ)」とし、かつ外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸等を有する建築物を指します。
ここでいう準耐火構造とは、壁・柱・床・梁などの主要構造部が、火災終了までの間ではなく、火災時の一定時間(45分・60分等)、建物の倒壊や延焼を防ぐために必要な性能(非損傷性・遮熱性・遮炎性)を持つ構造のことです。
これらは、国土交通省の告示(仕様規定)に基づくか、大臣認定を受けた工法を採用する必要があります。
実務において、準耐火建築物は大きく以下の3種類に分類・整理されます。
・準耐火建築物(イ):主要構造部を「準耐火構造」としたもの。一般的に45分準耐火構造が採用されますが、大規模な木造建築(3階建て学校等)では60分準耐火構造が求められる場合もあります。「燃え代設計」や「メンブレン工法(石膏ボード被覆)」は主にここに該当します。
・準耐火建築物(ロ-1) 主要構造部を「耐火構造」としたもの。 準耐火建築物としての要件に対し、ワンランク上の耐火構造(1時間耐火等)を採用することで適合させるケースです。
・準耐火建築物(ロ-2) 主要構造部を「不燃材料」で造ったもの。 鉄骨造などで、主要構造部を不燃材料とし、外壁を耐火構造等にすることで準耐火建築物とみなす手法です。
準耐火建築物の適用範囲の拡大
かつて大規模建築物は耐火建築物が必須でしたが、法21条(大規模建築物の主要構造部)の改正により規制が合理化されました。
現在では、高さ16m以下・3階建て以下であれば、延床面積が3,000㎡までの建築物(学校、老人ホーム、店舗等を含む)を「準耐火建築物」として設計することが可能です(※防火地域等の条件を除く)。
これにより、例えば郊外の商業施設や高齢者施設などを計画する場合、高コストな耐火建築物仕様を回避し、準耐火仕様を採用する選択肢が広がりました。
まずは敷地条件と用途から、準耐火が適用可能かを確認することが、コストダウンへの第一歩です。
木を見せる設計が可能に!燃え代設計(45分・60分)の活用法
準耐火建築物で最も注目すべき技術が「燃え代設計」です。
これは、火災時に木材表面が炭化しても、構造耐力上必要な断面(燃え残り部分)が確保されるよう、あらかじめ断面寸法を大きくしておく手法です。
これにより、石膏ボード等で被覆するメンブレン工法とは異なり、柱や梁をそのまま室内空間に見せること(現し)が可能になります。
準耐火構造には「45分」や「60分」の基準があり、それぞれの燃焼時間に応じた燃え代(例:45分なら35mm、60分なら45mmなど)を加算します。
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防耐火設計の具体的な手法(メンブレン・燃え代)
法的な位置づけを理解した後は、具体的な設計・施工手法の選定に移ります。
木造の防耐火構造には、大きく分けて「被覆型(メンブレン)」と「燃え代型」のアプローチがあります。
また、使用する木材のサイズや種類によっても選択肢が異なります。
意匠性、コスト、施工性のどれを優先するかによって、採用すべき手法は変わってきます。
ここでは、実務の現場でよく採用される2つの主要な防耐火設計の手法について、その特徴と使い分けのポイントを紹介します。
メンブレン型(被覆型)による耐火設計の基本
最も一般的で採用実績が多いのが「メンブレン型(被覆型)」です。
これは、柱や梁などの構造材を強化石膏ボードなどの不燃材料で完全に覆うことで、火災の熱から木材を守る手法です。
木肌は見えなくなりますが、内装制限をクリアしやすく、一般的な流通材を使用できるためコストメリットがあります。
特殊な大臣認定が不要な告示仕様での対応も容易で、多くの施工会社にとって取り組みやすい工法と言えます。
プレカット技術は、この被覆下地の加工精度向上にも貢献しています。
燃え代設計(大断面集成材)を用いた木質感の演出
「木造らしさ」を最大限に表現したい場合に採用されるのが「燃え代設計」です。
45分、1時間などの準耐火構造において、火災時に表面が燃えて炭化層を作るため、構造耐力上必要な断面に「燃え代」分を上乗せします。
これにより、柱や梁を露出させることができます。
大断面集成材を用いるケースが多く、ダイナミックな木造空間を実現できますが、正確な構造計算と、特注サイズの木材手配が必要となります。
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複雑な防耐火設計を支援するウッドリンクのソリューション
中大規模木造の防耐火設計は、法規と構造、そして意匠が密接に絡み合う難易度の高い業務です。
「木造の経験が浅く、法規チェックに不安がある」「最適な構造計画がわからない」といったお悩みを持つ建築実務者様も多いのではないでしょうか。
ウッドリンクは単なる木材供給・プレカット会社ではありません。
設計の初期段階からパートナーとして参画し、構造計算から防耐火の仕様検討、加工、現場納品までをトータルで支援します。
ここでは、皆様のプロジェクトを成功に導くウッドリンクの強みをご紹介します。
構想段階からの構造・防耐火計画サポート
ウッドリンクには、中大規模木造に精通した構造設計チームが在籍しています。
基本設計の段階からご相談いただくことで、「このプランなら準耐火でいける」「燃え代設計で対応可能」といった具体的なVE(バリューエンジニアリング)提案が可能です。
防耐火の仕様に応じた最適な樹種や断面寸法の選定を行い、無理のない構造計画を立案します。
法適合性の確認も含め、設計者様の実務負担を大幅に軽減します。
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特殊な金物とプレカット加工による施工合理化
中大規模木造では、住宅とは異なる特殊な接合金物や、大断面の加工技術が求められます。
ウッドリンクの工場は最新鋭の加工機を備えており、複雑な仕口や特殊金物の取り付け加工(スリット加工等)を高精度に行うことができます。
防耐火被覆の下地組みに必要な細かなプレカットにも対応しており、現場での手加工を極限まで減らすことで、施工品質の安定と工期短縮を実現します。
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中大規模木造の実績に裏打ちされた技術提案力
北陸エリアを中心に、私たちは数多くの商業施設、老人福祉施設、クリニックなどの中大規模木造プロジェクトを手掛けてきました。
そこで蓄積されたノウハウこそが最大の強みです。
「木造 耐火建築物」「木造 準耐火建築物」それぞれの施工実績に基づき、現場で起こりうる問題を未然に防ぐ提案を行います。
木材のプロフェッショナルとして、意匠設計者の想いを「現実」にするためのソリューションを提供し続けます。
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まとめ
中大規模木造建築における防耐火法規は、一見すると複雑で高いハードルに感じられるかもしれません。
しかし、近年の建築基準法改正による規制緩和や、燃え代設計などの技術進歩により、以前よりも柔軟かつ経済的な設計が可能になっています。
重要なのは、プロジェクトの早い段階で「耐火建築物」とすべきか「準耐火建築物」で成立するかを見極め、それに応じた適切な構造計画と材料選定を行うことです。
この初期判断が、コスト、工期、そして最終的なデザインの質を決定づけます。
ウッドリンクは、木材を販売するだけでなく、建築実務者の皆様の「技術パートナー」として、中大規模木造の実現をサポートします。
複雑な法規の解釈から構造計算、特殊加工、現場配送まで、ワンストップで対応できる体制を整えています。
「木造でこんな建物が建てられるか?」という構想段階から、ぜひお気軽にご相談ください。
ウッドリンクは中大規模木造の頼れるパートナー
中大規模木造にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
ウッドリンクを一言で言えば、「木造建築の構造体メーカー」です。
ウッドリンクでは阪神大震災を機に構造体の独自開発をスタートし、耐震性と断熱性に優れた高品質軸組パネル「プレウォール工法」を開発しました。
現場加工ではなく、プレカットと呼ばれる工場加工を行うことで、品質の安定した高精度な構造体を提供することができます。
降雪地帯で湿度の高い、北陸の気候に適した「プレウォール工法」。
その高い信頼性が支持され、ウッドリンクは構造体メーカーとして北陸No.1シェアの実績があり、倉庫や店舗、高齢者施設などの非住宅の用途にも多くの実績があります。


