非住宅木造にチャンス!非住宅補助金のご案内
今回は、非住宅の木造化を後押しする補助制度「JAS構造材実証支援事業」についてご紹介いたします。
木造建築に取り組みやすくなるこの制度、ぜひ皆さまの事業にもご活用いただければと思います。
このコラムでわかること
JAS構造材実証支援事業ってどんな制度?
この事業は、店舗や福祉施設、事務所などの非住宅建築において、JAS規格に適合した構造材を使用することで、木材の調達費の一部が補助される制度です。
木造建築とJAS構造材の普及促進、地域材の活用を目的として、令和2年から実施されています。
主なポイントは以下の通りです。
・対象は非住宅の木造建築物で構造計算をしていること(住宅は対象外)
・JAS構造材を主要構造部に使うこと
・補助金活用のために、3段階の申請が必要となること
補助額は一律ではなく、対象となる木材の使用量によって変わります。
単価は後述しますが、令和6年度事業では約120坪の事務所で約300万円の補助がおりた事例があります。
またこの補助金を活用する際に一番気をつけなければならないポイントが、「建物の建築スケジュールと申請スケジュールのタイミングが合うか」という点です。建物の条件が基準を満たしていても、スケジュールが合わず補助金活用ができないという事例が毎年何件もあります。
確実に補助金活用を進めるための、事前準備と建築スケジュールの目安、注意ポイントも併せて解説していきます。
※令和7年度事業をもとにした内容となっています。
来年度の事業の有無、事業要件が変更になる可能性があることをお含みおきください。
対象となる建築物
この補助制度は、すべての非住宅建築が対象になるわけではありません。
以下のような条件を満たす必要があります。
<対象となる建築物の条件>
・建築主が国以外であること(民間・自治体など)
・建築主との間で、補助金の活用や成果の公表について合意が取れていること
・新築及び増改築の建築確認申請において、構造計算の実施が確認できること
・助成対象となる床面積が10㎡以上
・他の公的補助を受けていないこと
・居住専用住宅や事業併用住宅は対象外
原則、非住宅建築が対象となっていますが、下記に該当する「長屋、共同住宅、下宿、寄宿舎」は、1社につき1棟に限り、助成対象となります。
<条件>延床面積300㎡超え、又は3階建て
対象となる事業者
補助金の申請を行う対象事業者は、建築主ではなく、対象物件の建設業者です。
事業者は以下の条件を満たす必要があります。
<対象となる事業者の条件>
・JAS構造材活用宣言事業(利用事業者)に登録していること(又は3ヶ年目標の更新)
・木材SCM支援システム「もりんく」登録者であること
・対象物件の建築確認申請において、施工者として確認できること
・建築工事業又は大工工事業の認可を受けた事業者(法人)であること
・同年度に3件以上申請する場合は、さらに条件あり
対象事業者は補助金の申請に関わる書類作成や、スケジュール管理、申請に関する事務局との質疑対応等を行う必要があります。
少し条件が多く感じられるかもしれませんが、WOODCOREでは申請に向けたサポートも行っておりますので、ご安心ください。
対象となる構造材と補助額
事業の対象となるJAS構造材は、下表の8つのJAS製品です。
非住宅木造で標準的に使用されることが多い、構造用集成材や構造用合板も対象となっています。
①~⑥はそれぞれ指定する構造部に使うと、助成対象となります。
助成対象となったJAS構造材は、指定構造部以外に使った材も全て助成対象とすることができます。
また⑦⑧は、「①~⑥が指定構造部で使われている階」で使っているものを助成対象とできます。
①~⑥までは使用材積×単価、⑦⑧は調達費(木材代+プレカット加工費+運搬費)の1/2が補助額となります。
上限は1申請あたり1,500万円(延床面積が3,000㎡を超える場合は3,000万円)です。
またJAS構造材は、クリーンウッド法に基づいて合法性が確認された木材であることが必要です。
実績報告時の納品書と施工写真等で確認されます。
対象材料の確認や補助額の算出など、WOODCOREでサポートできます。
構造材以外の要件
この他にも下記の要件を満たす必要があります。
・実証テーマの設定と取組
・炭素貯蔵量の算出
・(住宅用途の場合)国産木材活用住宅ラベルの表示
中でも「実証テーマの設定と取組」は、採択の優先順位にも関わる重要な要件です。
選べるテーマは以下の3つ。上から順に優先度の高い取り組みとなっています。
(1)地域課題への対応(例:地域材の活用等)
(2)地域材の良さの普及(例:木の魅力を伝える見学会の開催等)
(3)設計・施工の合理化(例:鉄骨造からの切り替え等)
申請後には、選定したテーマに基づいた成果報告も必要になります。
3段階の申請とスケジュール
補助事業の活用には、「事業者登録」「事業申請」「交付申請」の3段階の申請が必要になります。
<事業者登録>
まずは補助金を活用する事業者の登録が必要です。
正式には「JAS構造材活用宣言事業者登録」といい、JAS構造材の普及と利用拡大に対する目標を3年分登録するものです。
補助金の活用予定がある場合は、事業者登録の開始後、早めに登録を行っておきましょう。
<事業申請>
補助金を活用したい建築物について、要件への適合を確認し、必要書類を取りまとめて行う事業へのエントリーです。実証テーマについてもこの時点で設定します。
この時点では以下の書類が必要になります。
・事業の申請様式
・建築確認申請書(第一面~第六面)の写し(※受付済みであること)
・建設業許可証の写し
・木材の見積書
・建築物の平面図、立面図、配置図、軸組図、梁伏図
・工事の工程表
<交付申請>
助成対象木材の施工完了後に行う実績報告です。建築物自体の完工とは関係なく、対象木材の施工完了後(上棟後)速やかに行う必要があります。
・事業の申請様式
・建築確認済証
・木材の発注書、請求書(内訳含む)
・建築物の平面図、立面図、配置図、軸組図、梁伏図
・合法伐採木材であることの証明書等
・工事記録写真
・木材の炭素貯蔵量を示す書面
令和8年度(2026年度)の実施については、現時点では未定です。
ただし、過去の実績からある程度のスケジュール予想が可能ですので、参考までにご紹介いたします。
・活用宣言登録期間:4月上旬~翌年3月中旬
・事業申請期間:6月上旬~6月下旬
・交付申請締切:11月末
スケジュールの注意ポイント
・木材の発注は事業申請期間開始後とすること
公募開始前に発注された木材は対象外となります。
・事業申請期間に必要書類が揃えられるか
事業申請には建築確認申請が受付済みであることが必要です。(構造計算必須であることから注意が必要)
事業の要件発表から公募開始までが短く、申請期間も2〜3週間程度と短いため、事前準備が不可欠です
・採択前に建て方が完了してしまうと対象外となる
申請~採択までは早くても2ヶ月かかっています。採択前に建て方とならないよう、余裕をもった工程としておくと安心です。(採択前の着工はOK)
また採択は先着順ではありませんが、審査は先着順となっています。建て方の予定時期が早い場合は、応募開始直後の申請をお勧めします。
・建て方が交付申請締め切りに間に合うか
確認申請や各工程の遅れにより建て方時期がずれ込んでいくことがありますが、交付申請締め切りまでに対象木材の施工が完了していないと、対象外となります。施工完了後書類を取りまとめて発送する期間も考えて、遅くとも締め切り1週間前までの建て方完了としてください。
これを踏まえて、スケジュールでは下記の2点を目安として計画してください。
①5月中に確認申請を提出できるように、必要書類と準備と構造計算を進める
②建て方は9月後半~11月中旬まで
早めの準備が成功のカギとなります。WOODCOREでは、補助金申請に関するスケジュール調整や事前準備等、計画段階からのご相談も承っております。
申請に関するご相談はお気軽にどうぞ
弊社では、JAS構造材実証支援事業の申請に関するサポートを承っております。
令和2年度からの当事業において、27件の申請サポート実績があります。
<サポート内容>
・活用宣言の登録支援
・実証テーマの選定アドバイス
・書類作成のサポート
・木材調達に関するご相談
「木造で建てたいけれど、補助金の申請が不安…」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
制度をうまく活用することで、木造建築の魅力を活かしながら、コスト面でもメリットを得ることができます。
ぜひ、設計段階からのご相談をお待ちしております。
繰り返しになりますが、令和8年度の事業実施は現時点では未定です。
制度の継続は、国の予算編成や林野庁の方針によって決まります。
最新情報はWOODCOREでも情報が入り次第、メールマガジンにて随時ご案内いたします。