木質空間は人にやさしい 〜ストレス緩和に寄与する木材の力〜
近年、公共施設や医療・教育機関をはじめとした非住宅建築において、木材を積極的に取り入れた「木質化」が注目されています。
その理由のひとつに、木材が人の心理に与える良い影響が、科学的な研究によって証明されつつあることが挙げられます。
今回は、京都大学などの研究グループによる実証実験をもとに、木質空間がストレス緩和にどのように貢献するのかをわかりやすくご紹介します。
このコラムでわかること

【実験紹介】杉材を使った木質空間のストレス緩和効果
京都大学医学研究科などの研究チームは、成人男女30名を対象に、心理的なストレス状態を意図的に高めた上で、木質空間と非木質空間に30分間滞在してもらうという実験を行いました。
【実験概要】
・被験者:成人男女30名(20〜40代)
・滞在時間:30分
・空間A(木質空間):壁2面に杉材パネルを施工
・空間B(非木質空間):壁すべてをビニルクロス仕上げ
・評価方法:POMS短縮版による心理テスト(6項目)
実験結果① 木質化による感情スコアの改善

わずか30分の滞在で、木質空間にいた被験者は多くのネガティブな感情が大きく軽減されました。
特に「怒り」「抑うつ」といったストレス関連の項目で顕著な改善が見られた点は注目に値します。
実験結果② 唾液成分に見るストレス軽減の傾向
心理評価に加え、唾液中のストレス関連成分(クロモグラニンA、コルチゾール、IgA)も分析されました。
その結果、いずれの空間でも滞在時間の経過とともに軽減傾向が見られたものの、空間ごとの差異はあまり見られませんでした。
このことから、心理的な快適性は木質空間が圧倒的に高い一方で、短時間での生理的変化には大きな違いが出にくい可能性が示唆されました。
【木材の心理的要素】視覚と嗅覚がもたらす癒し
研究チームは、木材の持つやさしさの要因として「視覚」と「嗅覚」による影響を挙げています。
杉材の柔らかな色合いや自然な木目、そして木の香りが、まるで森林にいるような安心感を与え、気分を落ち着かせる効果を生み出していると考えられます。
まとめ
木質化が実現するやさしい非住宅空間
木質空間は、教育・医療・福祉・オフィス・商業施設といった幅広い非住宅建築物において、「人にやさしい」空間づくりに大きく貢献します。
ストレス低減や集中力向上といった心理的メリットだけでなく、温熱・湿度調整・衛生面でも優れた性能を持ち、科学的根拠も豊富に蓄積されています。
木質化の進行は、建築の新たな価値を生み、環境配慮と快適性を両立させる持続可能な未来につながります。
ウッドリンクでは、非住宅建築における木質化提案も、木材のプロとしてしっかりと対応させていただきます。
教育・医療・商業施設など多様な設計・施工のニーズにお応えしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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【参考文献】
出典:齋藤 ゆみ、西巻 優、辰己 尚隆、小野 さや香、木下 美絵、笹山 哲、齋藤 邦明:「木質空間およびビニル空間における疲労・ストレスの緩和効果」『木材学会誌』第55巻第2号、2009年、pp.101-107
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwrs/55/2/55_2_101/_pdf/-char/ja